新津医療センター病院

スペシャル対談

対談のお相手

院長 豊島 宗厚先生

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院長(以下・・院)
「ますます経営が厳しくなっていく中でどうやって生き残っていくか。それは1にも2にも自分たちの守るべき人たち、この新潟市という地域をどう考えるか、に懸かっていると思っています。
まず挙げられる事は圧倒的な高齢化率で、当然優遇率が高くなる。65歳以上が26%くらい、そういった高齢者たちが病気を持っているのは当たり前、という状況をどう管理していくか。入院か外来かあるいは養護的なものが必要なのか」

富家孝(以下・・富)
「なるほどね、私が新人だった頃12万5千人だった医師が今は26万人いる。その代わり地域偏在している。だから都心部でない所にどう人を集めていくか。それには病院の特色を出していかないといけない。この地域の『良いもの』を再発見したり作ったりしていかないといけない。例えばここの特色である周りの自然をどう取り込んでいくか、花や緑がある環境で何を売り込めばいいか、という基本的な考え方っていうのが座っていた方がいいのかもしれません。

院:「新潟市は広域化された政令指定都市ですから(2007年より)、みんなが残っている地域として位置づけられています。その中で街にいる人たちがホッとできるような場所として、例えば植物園なんかを作っていますし、美術館も良い所に作ってあります。そういうところで、家族連れで楽しんでいただく」

富:「なるほど」

院:「それに今は所謂健康ブームですけども、健康食品の研究ということで薬科大を中心に研究所を建てて、いくつかの企業が入っています。これらは直接医師に関係があるという事でもないですが、医師が地域性を知る上での一つの前向きな情報です」

富:「なるほど、新潟市も大学も地域の活性化に努力しているんですね」

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富:「今医師は何名いますか?」

院:「現在常勤が10名ですね」

富:「やはり新潟市から通ってくる先生が多いんですか?」

院:「殆どのドクターは新潟市から通っていますね。道が整備されていますから、新潟からは30分です。病院側のバックアップとして、ドクターにはそれだけの距離を通ってもやれる体制にしてきた、というのがあります。30分かけて帰ったドクターを急患で呼び出すようなことは考えていません」

富:「外来の総数は一日でどれくらいですか?あとベッド数は?」

院:「1日の外来患者数は全体で250名。ベッド数は170です。診療科は内科・外科・小児科・整形外科・泌尿器科以上が常勤ドクター。あとは新潟大学から来てもらっている医師は神経内科・皮膚科・眼科・循環器内科・放射線科というのが今のスタッフ体制ですかね」

富:「それで救急車が入ってくることもありますよね?年間どれくらいですか?」

院:「400件くらいですね。もちろん救急車も、老人を全てとるわけにもいかないですから、各病院と協力して、出来るだけとる体制を取っていますし、消化器病に関しては100%とるようにしています」

富:「ここの後方病院のメインというのはどこなんですか?」

院:「新潟の主たる病院ですね、大学病院や市民病院です」

富:「そういうところとは連絡を密にとっている、という感じですか」

院:「そうですね、また地域医療の連携化を深めるために「地域連携協議会」という会がありまして、今年で4回目なんですが、例えばケアマネージャーを中心としたケアカンファレンスや地域連携パスについてなど、多岐にわたり協議しています」

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富:「ここは常勤が10名いらっしゃるんですか。いいですね」

院:「まぁ10名もいるというか10名しかいないというか」

富:「いや10名いらっしゃるんでしたら結構な数ですよね」

院:「まぁお年をとられたベテランドクターもいますし、それとは別に小児科の先生が2名。あとうちは地域の消化器科を担っていかなければならない」

富:「消化器科が多いということですね?」

院:「周りでそういう消化器科をやっている専門医院が少ないから必然的にうちがやっていかなければならない。消化器科をやっている開業医は2件。非常に寂しい状況ですね。うちで消化器科での入院や1次から1.5や2次診療くらいまではカバーできている。それに積極的に参加してもらえるドクターが欲しいですね。やっぱり消化器科としてきちんとした治療を行っていかなければならない」

富:「一つの柱として消化器科なんですね」

院:「そうですね。そして次の柱として老人医療ということですね。ま、主流は消化器ですが。幸いな事に、大学の消化器内科、消化器外科が可能な限りバックアップをしてくれる。ただ人は出せない。常勤としての人は出せない。そういう状況です」

富:「消化器科というのは、メインは外科ですよね」

院:「そうですね、肝臓とかなら内科で扱うべきだと思いますけど、やはり外科的なものが背景に控えていてくれないと、思ったようにはできないですね。それからその延長とも言えるのですが、消化器をやるなら栄養ですね。これに至らないと足元を掬われてしまう。老人医療と消化器医療との懸け橋、土台、基礎の部分でつながっているのが栄養です」

富:「なるほど」

院:「それで平成16年8月からNST(Nutrition Support Team)栄養管理サポートチームを立ち上げてやっています。コアメンバーは10名。私と消化器外科医、消化器内科医、小児科医、看護師ですね」

富:「その人たちは常勤でやってるんですか?」

院:「常勤で週5日ですね」

富:「老人医療ってのは、メインは消化器ですよね?」

院:「そうですね。圧倒的に多いですね」

富:「呼吸器はどうですか?」

院:「呼吸器も多いです。75歳以上の老人の死亡率で一番多いのは肺炎ですからね。ですから呼吸器科のドクターが欲しいですね」

富:「呼吸器の先生はいらっしゃらないんですか?」

院:「いないですね。ですから我々はこの5年間色々勉強して、バックアップするだけの体制をとろうとしています。例えばこの病院の肺炎で一番多い起因菌は何か。一番効く抗生物質は何か。これを知りたくて感染対策チームを作ったんですよ。それを参考にすれば無理なく消化器科のドクターでも対処できますし、効率的な薬の管理もできる。自分の思うままに『今回はこれを使ってみようか』というような非合理的なことはしなくてよい」

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富:「最近は病院同士で交流しているところもよくあるんですよ。例えば心臓外科なんかでも神奈川県の大和成和病院と北海道の大野病院と新東京病院と、とか。そういう計画は?」

院:「この病院がとるべきポジショニングを考えたうえでやっています。例えば老人療養期というのを一つの部署として受け入れて、その後自宅へ帰すなりする。そういう中間的な施設みたいなことはやっています。そのような取組みのおかげで、消化器科に関しては周りから認知されるようになりました。しかし病院間の連携はまだですね」

富:「受け入れを交換できるようなそういう形はできていない?」

院:「そういう意味では、新潟県自体が閉鎖的かもしれません。例えば内視鏡の処置が出来ないので大学から一時的にドクターを派遣してもらう、それこそ2時間とか3時間とか」

富:「ここには内視鏡の専門の先生はいらっしゃらないのですか?」

院:「いえ、3名おります。ここは消化器病の研究施設にもなっていますし、外科も認定施設になっています。ここでのキャリアが専門医へ直結となるんです」

富:「なるほど、研修制度も変わりましたからね、4年間研修をして、これから実施をしていく若い医師は、それぞれこれからどういう所にいこうかっていう考えがあるわけですよ。位置づけとしては、消化器っていうところでやりたい人が自由にやる、という位置づけですかね」

院:「ええそうですね。それから外科のドクターは少し不足しているのですが、複数人いるところは時間的にゆとりを持たせていますね。消化器科のドクターは3人いますから、ほとんど任せられます。学会に出たい、休みがほしい、当直は業務が少ない日にしたい、といったことも出来ます」

富:「そうしたら実質的には3名~4名で当直を回しておられるわけですか」

院:「そうですね、4名が当直で1名が日直だけ、という形ですかね。あと大学からくるので、5名ですね」

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富:「新潟大学からは結構いろいろバックアップが?」

院:「そうですね、各科そういうバックアップは受けていますね」

富:「しかしほんとよくこれだけ常勤がいらっしゃいますね」

院:「なんとか20数年で。(笑」」

富:「医療は設備だとか機械だとかよくいう人がいますけど、医療の場合は医者がいるということが財産ですからね、それが結果一番の設備投資といいますか。そこに一番力を添えてないと結局ダメなんですよね。いくら機械があってもそれを使う人(やる人)が問題ですからね」

院:「そうですね。どんなにいい器を作っていい機械入れても医者がいなけりゃ閑古鳥です。そうすると患者に還元できない」

富:「消化器の手術は年間どのくらいなんですか?」

院:「消化器だけでしたら120症例くらい。それもある程度限られたものです」

富:「それは常勤の先生が1人でやっておられるわけですね?」

院:「いや、これも大学から助教授が来たりする場合もあります」

富:「なるほど」

院:「ですからたくさん手術をしたいとか、難度の高い疾患に触れたいとかになると、圧倒的に大学病院になりますね。若くて特殊な病気に罹っているという人たちも我々は扱いません。大学病院などに回します。また特殊ですが、チームを組んで細かいところまで診るとなると限られてきますし、そういうスタッフになれる人も限られてきます」

富:「一般的に、一番医者としてジェネラルなものも含めて実力をつけたいという人や、4年間終わって、老人医療とか消化器を中心にやりたい方にとって、ここはとてもいいですね」

院:「そうですね、しかもそれでいて孤立はしていませんよ、というところですかね」

富:「老人医療を嫌がっているようじゃ医者として世の中生きていけませんからね。これからの一番大きな分野ですから」

院:「やっぱり70、80歳でもまだまだ長生きしたいとみんな思ってますからね(笑)」

富:「そうでしょうね、そういう意味では日本の人口動態を一番表している地域かもしれないですね」

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富:「ここは医療トラブル(訴訟)がおこったことはありますか?」

院:「幸いにもまだありません。ただいつ来てもおかしくない、という緊張感は常にありますね」

富:「ではいい形で運営されてきているんですね」

院:「そうですね、常々思っていますが、医療の基本として、信頼関係を患者さんといかに築き上げていくか?というのがありまして、それは今のところうまくいっているのかな?と。しかし臨床の中で、注射の一刺しから患者さんにチェックを受けている。という印象はありますね」

富:「患者の目が厳しくなれば、人気のない病院は淘汰されていく時代になったという事でしょうね。悪い噂はネットであっという間に広がりますしね。現に、アメリカなどでは現実に医師が失業しているようです。シカゴあたりでは元医師が現在はタクシーのドライバーという話もあります」

院:「そうなんですか?」

富:「アメリカはご存知のとおり訴訟大国なので医事紛争が一度起こると非常にお金がかかる。そのために掛ける保険も当然高いので、儲かっていないところは払えない。つまり廃業転職となる。
アメリカのような極端な訴訟大国に日本がすぐになるとは思えませんが、日本でも医療事故はすぐ報道されますし、責任追及のための訴訟はもっと増えてくると思います。そうなった際、日本の医師はどうなるのか?というのがありますね」

院:「医師免許にあぐらをかいた、不勉強なドクターはやめてもらっていいと思いますけどね」

富:「現在、医師は2万6千人いますけど、これからはどうなるのか分からない。でも今もっと深刻なのは歯科医師の方ですよ。都市部の歯科医師はあきらかに過剰ですから」

院:「今はいろんな大学があって、医師や歯科医師で溢れていますけどね。そういう医師がどんどん雇ってくれと来てくれるのが夢なんですけどね」

富:「医者の失業時代がくるのは早いと思いますね」

院:「あと20年ももたないかもしれませんね」

富:「もたないと思いますよ。医療の人は失業時代が来ないと思っていますけどね」

院:「しかし来るように思えないんですよね。ずっと言われ続けていたけど」

富:「それは医師が偏在しているからそう思うだけであって」

院:「そしたら東京あたりから溢れてくるんでしょうか」

富:「ええ、溢れてきますよ。そのときに選別しなければならない。というのがありますよね。その選別のときにどうするか、と考えたときに、ポイントが3つありまして、多重債務の人。病気で入退院を繰り返している人。薬物などの常習者。そういう人はネットなどでエントリーしてきますから、その時点では分からないんですよ」

院:「どうやって見分けているんですか?」

富:「それこそが私の強みで、いろいろなオフラインのネットワークから情報を集めてくるんです」

院:「医師時代からの人脈ですね」

富:「そうですね、医師でありながら医師の転職紹介やジャーナリストとして活動をしている人は私以外いませんから」

新津医療センター病院の特色は多面的に地域との連携を作っている点であります。
ひとつはこの地域の医療福祉連携協議会を立ち上げ、定期的な運営委員会を主催している点。
もうひとつは「新潟薬科大学」との連携を介して新潟バイオリサーチパーク構想における支援であります。
何といっても高齢社会における時代の先取りの発想がすばらしい。
地域医療にかける若手医師には是非挑戦してほしい医院である。

医師・ジャーナリスト 富家 孝(ふけ たかし)

当院について

名称 医療法人社団 健進会 新津医療センター病院
院長 豊島 宗厚
基本理念 社会の人々の健康を守ることを基本とし、医療・保健・福祉にわたるサービスを提供して相互信頼を高め地域社会に貢献する
病院行動
基本方針
1.優しさと、思いやりを大切にする病院
1.職員間の強調を高め、明るく活気のある病院
1.情報開示をすすめる病院
1.医療水準の向上をめざす病院
1.経営安定のもと、施設の充実をはかる病院
許可病床数 一般病床126床/療養型病床48床
TEL 0250-24-5311
HP http://www.niitsu-mch.jp/
診療科目 内科・神経内科・循環器科・泌尿器科・小児科・外科・整形外科・皮膚科・眼科・歯科・口腔外科・リハビリテーション科・心のケア外来
◎人間ドック・各種健診